Ｊｕｎ太の独り言

Part1：若気の至りか過ちか？
　ビートとカプチーノがＫカーのスポーツＯＰＥＮとしてライバル視されるケースは多い。しかし、それも考え方ひとつで、ある意味全く比較の対象とできないクルマ同士であることも認識しておかなければならない。
　それは昨年の７月中旬に箱根ターンパイクにて行われた、第一回「ＣＢ（Cappuccino＆Beat）６６０ミーティング」の１コマでのこと。このイベントは、われわれの古くからの友人「Ｃ氏」が近年カプチーノを購入したことから、ぜひ一度、互いのクルマのインプレッションを兼ねてミーティングを行おうということで行われたものである。早朝より箱根路のドライブを楽しみながら、ターンパイクのとあるパーキングに到着。一息つきながら、クルマ談義に花が咲き、気が付くとＣ氏をＭｙＢｅａｔのドライバーズシートに招いていた。いよいよインプレッションの開始である。
乗り込むやいなや、Ｃ氏もビートの開放感あふれるコクピットと、簡素にして機能的な計器類に感銘を受けた様子で、感触はまずまず。シフトの感じも、カプチーノとは異なった良い印象をもったようで「的確に決まりそうでなかなかいいな」と一言。どこかカプチーノを選んだことへの後悔の念を私に悟られまいとする言動が、（この時はそう思えた）かえって私の優越感を沸き立たせるのであった。と、ここまではよかった。私のこのミーティングに意図したストーリー、[〜ビートの魅力を最大限にアピールすること〜]が音を立てて崩れていったのは、Ｃ氏がイグニッションキーをひねった次の瞬間からだった。ＭｙＢｅａｔが背後より猛たましくうなりをあげると、Ｃ氏はアクセルを２〜３回軽くレーシングさせ、そのエンジンフィールを感じ取ろうとしていた。 Ｃ氏のカプチーノ
「レスポンスのいいＭＴＲＥＣ３連スロットルで武装した４バルブエンジン。しかもそれをミッドシップに積んでいるんだ。いい感じだろ？」心の内にサクセスストーリーを１行づつ書き記す私がいた。しかし、Ｃ氏がボソッと漏らした言葉はあまりにも予想に反するものだった。「・・・なんかうるさいね。」　ガーン！な、なぜだ！私がビートのエンジンをはじめて始動させた時は、“セルモーターがの音が、後ろからするぞ！ミッドシップの証だ！しかも、ナンパな現代車にはないスパルタンなエンジン音！激しく反応する垂直指針式のレブカウンター！ハートに響く官能的なエンジンの鼓動！”と絶賛の嵐が巻き起こったのに。どう反応してよいか分からず一瞬戸惑ってしまった。しかし私は冷静を装い、次に訪れるもの〜走り出せば、ＯＰＥＮらしからぬ高剛性ボディ、そこから生まれる走りの信頼感、小気味よい回頭性をみせるハンドリングにきっと驚かされるに違いない〜と期待し、コースインを急かした。しかし、コースインの直後、私は重大な間違いに気づいた。
会長の銀ビー 時すでに遅し。大きな不安が津波のごとく私を飲み込んでいった。まずいことに、うっかり上りでＣ氏に運転をさせてしまったのだ（下りでさせればよかった）。ＮＡでもともとトルクの細いビートは、ターンパイクの急勾配で、その弱点をもろに露呈してしまう。１速・・・、２速・・・、本来ならクロスレシオ化され、リズミカルにシフトアップされるはずのミッションも、上りという条件の下、気が遠くなるようなシフトのスパン、加速が乗ったかと思うと現れるコーナーによって打ち消されてしまう。もちろん、コーナリングを楽しめるスピードになどは達せず、ミッドシップの軽快なハンドリングを味わう余地もない。さらに悪いことに高度があがるにつれ次第に高山病の症状が出始め、大人２名乗車とあいまって体感的にも原付ほどの加速しかしなくなってしまっていた。
と次の瞬間、エアコンのコントロールパネルでグリーンの光を放つＡ／Ｃのインジケーターに気づく。やってしまった。梅雨時の湿気が気になるこの時期、ついエアコンを付けっぱなしにしていたのだ。すぐさまエアコンのスイッチを切ったが事態はすでに取り返しの付かない領域に達してしまっていた。その程度の小細工では症状は一向に改善されず、かえってその行為がＣ氏に、己がみじめさを象徴するかのごとく、ただの悪あがきととられてしまった。（あちゃー！）そこにＣ氏の勝ち誇ったような顔があったことは言うまでもない。人間何事も第一印象が肝心。たとえそれから、Ｕターンし得意の下りを味わったとしても、彼が体験してしまった上りでの“それ”はあまりに衝撃が強く、その記憶を消し去れる範中にはないのだ。恐る恐るＣ氏の表情をうかがう私、そこにＣ氏の勝ち誇ったような横顔があったのはいうまでもない。初めてのミーティングにして、その惨敗感を味わってしまった私。パワーやトルクだけが、すべてじゃない！と自分を慰めるが、その後軽快にターンパイクを駆け上がっていくカプチーノの後ろ姿に悔しさを感じてしまったのは、ビートが本来持つ魅力を把握できてな いままに、第三者に下手な売り込みをかけてしまった営業マンのごとき自らの至らなさであった。（まだまだ蒼いのう！）

　・・・・・・・それから、一通りの季節をビートとともに過ごしてきた私。この頃やっと、ビートの楽しさがどこから来るものなのか解ってきたような気がする。「ビートに乗ると、理由はわからないが、なぜかワクワクしてしまう。こんなクルマは初めてだ。」私が、このクルマに出会った頃の正直な感想であり、それは今も変わらない。唯一変わったのは、その理由が何なのかを探求するスタイルかもしれない。人に同意を求めるようなものじゃない。人に意見を押し付けて得られるものじゃない。それじゃあ何なんだなんて、そんなことも考える必要はない。感じるままに、気の向くままに、ゆっくりと時間を忘れることができればいいのではないだろうか。インターネットを通じて、これから色々な人のさまざまな体験を目にしたい、いろいろな意見を大切にしてみたい。ビートというすばらしいクルマを語りながら、いっしょに時間を共有してみたい。そんなことを感じている今日この頃なのである。

会長Ｊｕｎ太