Part1：僕がクルマを、そしてビートを好きな理由

　1982年、ドアミラー解禁直前当時にドアミラー・ミッドシップ・２シーターと言えばホンダ・アクティしか無かったのはあまりにも有名な事実であるが、こんな事を中学生の時からギャグのネタにしていた僕が如何にして車が好きになり、何故にビートを購入するに至ったかをつれづれなるままに書き連ねてみたいと思う。

マッハ号（新）

原体験はＴＶアニメ「マッハGOGOGO！」だった。この頃から、自動車会社のエンジニアだった父親から「クルマが大好き」という情報をインプリンティング（刷り込み）されていたように思う。４歳の時、その父親が仕事の関係でタイに転勤、同時に僕はスーパーカーに猛烈な興味を持ち始める。アジアの国にしては結構スーパーカーを目にすることが多かったのだ。フェラーリ３６５、５１２BB、デイトナ、ディノ、ＢＭＷ２００２ターボ、ポルシェ９１１、マセラッティ・メラク、ボーラ、オペルＧＴ、ランボルギーニ・ミウラ、ウラッコ、ジャガー、トヨタ２０００ＧＴ、一応、フェアレディＺ（但しＧノーズのみ。ラリー車と言うイメージも強かった。）もスーパーカーの扱いだった。そしてそれらのクルマを追い回し、子供用の簡単なカメラで写真を撮っては悦に入っていた。

やがて帰国。小学校高学年の時に、池沢さとし氏の「サーキットの狼」が大ヒットだったが、海外でヒートアップし尽くした僕にとっては、「あぁ、ロータスヨーロッパってそんなに速かったのか・・・」と思い、写真に撮れなかったことを悔やんだ程度であった（今はすごく好きな一台だが）。やはりこの時点でも２０００ＧＴ以外の日本車には興味がなかったように思う。この当時、限られた小学生の知識では、カッコや最高速度が全てだった為、外車指向に偏るのは仕方のないことであっただろう。 　そして1982年、引っ越しと同時に中学へ進学した僕が初めて会話を交わしたのがこの『クラブ２ビート』の会長であるＪｕｎ太だった。彼は同じクラスのＣと良くクルマの話をしていた。僕は、「クルマの話題ならバッチリだぜ！」と意気込んで会話の内容を横で聞いていた。しかし、である・・・、全く分からないのだ。クルマの話なのは分かる。しかしスーパーカーではなかった。そこには中学１年生にとってはあまりにディープな「４輪独立懸架」や「ツインキャブ」、「サーフィンライン」等、意味不明な用語が多すぎた。そう、彼らは日本車が好きだったのだ。それもかなりキてる。が、小遣いで高価な“モーターマガジン”や“モーターファン”を買い（これはその後より安価な“ドライバー”に変わっていったが・・・）、ホイールキャップやカタログを収集する彼らは実に楽しそうだった。

オオカミ(JPSspl.)

ディノ	分からない用語の意味を聞くとトコトンまで教えてくれた。そうしていつしか一緒にカタログを貰いに遠くのディーラーまで自転車で行くようになり、家の車を洗うことに楽しみを見つけるようになると、だんだんと自分が欲しいクルマ像を描くようになる。車を持つならスーパーカー、とは行かないだろうからスポーツカー。それもライトウェイトスポーツ！当時は1600ccクラスのライトウェイトスポーツ車が大流行、熱い戦いが各メーカー間で繰り広げられていたのである。こうして、いつの間にかすっかりクルマに魅せられてしまっている自分がいた。もしかすると友人らによる一種の洗脳だったのであろうか？（笑）　とにかくまんまとハマった。

　[閑話休題]
　初代ＭＲ２がデビューしたとき、その車名がミッドシップ・ランナバウト・２シーターの略だと聞いてちょっと笑ってしまったが、嬉しかったことも事実である。まずは日本にもスーパーカーと同じレイアウトを持つクルマが登場した。オオカミも誕生する日は近い。しかし、そのあとしばらくミッドシップは登場しない。日産がＭＩＤ４なるクルマを生産しそうだったが、どっか行ってしまったし、そのうちＭＲ２はモデルチェンジして、なんだか軽快感を失ってしまった。我らがホンダ（僕は筋金入りのホンダ党）からは、多分手の届かないであろうスーパーマシンＮＳＸが登場したが、ボディをちょっと凹ましただけで舌をかんで自決してしまいそうなクルマはパスである。むしろビートがデビューしたときの衝撃はそれ以上だった。何しろ「軽」である。手の届く価格は嬉しいが、買うのがためらわれるほど小さい。はっきり言って高速道路を移動するのは辛そうに見える。“非現実”の世界に属するクルマであることに変わりはなかった。

就職した僕は勤務先の大阪から神奈川の実家へ車で帰ることを想定して６３年式３代目プレリュードSi4WSを購入した。マニュアルシフトを探したのはせめてもの意地だったと思う。実はこの時ビートの購入を検討したのだが、自らのカーライフを予想し切れず、用途を割り切る事が出来なかった僕は結局ビートを買えなかった。しかしその後営業に転属して名古屋に転勤。しばらくはプレリュードに乗っていた。パワーもスピードも出たし、乗り心地も良かった。４ＷＳの独特のフィーリングは慣れれば扱い易かった。しかしそんなプレリュードをドレスアップしようとは思えなかったのだ。このクルマからは「走る」満足感を得られなかった。スタイルは結構好きだったのに、かわいそうなことをしてしまった。

さようならプレリュード

あなたの人生を 変えましょう

そして車検が切れたのを機に次のクルマを考えはじめた。このちょっと前に会長のＪｕｎ太がビートを購入。彼にしてみれば気軽な気持ちで特別な思い入れもなく、ただ通勤のアシとしての購入だったと思う。しかし、彼は徐々にハマっていった。ま、キッカケなんてこんなもんである。 　そしてそれから１年後の夏（つまり今年の夏だが）、今までよりクリエイティブな要素を求められる開発というセクションに業務が変わったのを機に、僕は何か自らの生活そのものを変化させたいという欲求が高まっていた。もちろん、前回諦めたビートは候補に挙がっていた。ネットサーフィンで色々なクルマのファンクラブを見て回った。すると、ビートのホームページがあるわあるわ。「やっぱりビートは楽しそうだ。」

　そんなある日、取引先との打ち合わせが予定より少し早く終わったので、ちょっと現物を見てみようかな、と思い軽自動車を専門に扱う中古車販売店に立ち寄ってみた。表から順に見て行く。…ない。奥へ進む…あった！ＡＺ−１とカプチーノの並ぶ、更に奥に赤、黄、銀のビートが１台ずつ。頭の中で「黄色だ！ナンバープレートも目立たないし、イメージカラーだし、ビデオ「Ｂｅａｔ〜完全征服マニュアル」でもインテリアデザインの気の強そうなネーちゃん（失礼！）も黄色を推していた！黄色を買うんだー！！」と、勝手に盛り上がり、気が付くとその黄色いビートの見積もりを取っていた。ちょっと高かったけど、傷ひとつないし、走行距離も少ない、確かに程度は良い。納車迄１週間。結局衝動買いのようにして購入を決めてしまっていたのだった。
　こうして、僕はビートを買った。しかし今、冷静に考えてみると、詰まるところ一番の購入の動機はホームページで見た衝撃、来年の「Meet The Beat!」に出たい！というその一言に尽きると思う。ずらりと並んだビートの中に自分のビートを並べたい！超高回転で回るエンジン、ミッドシップという素性の良さを感じるコーナリング、そしてもちろんフルオープンの快感。今ビートを買おうかどうか迷っている人、買ってしまいなさい。はっきり言って僕はどうしてもっと早くにこの車を買わなかったのかと後悔している。買ってしまえば人間どうにかなる。荷物は宅配便でも運べるし、アシになることもない（というかなれない）。無敵の直進安定性で、高速道路も怖くない。しかもエンジン音がメチャクチャうるさいので居眠り運転もあまりしなくて済む。燃費は良いし、高速代も２割安い。さぁ買おう、すぐ買おう、今買おう！そして９８年Meet The Beat!で僕と握手！