Part２：私がビートを買った理由（わけ）

著者近影!?

自慢じゃないが、私はエアコン付きのクルマを購入したことがなかった。
別にすごく貧乏で買えなかったわけじゃない（まあ裕福だったら買えたけど）。
実は１台、昔から大切に乗っている趣味の旧車（もちエアコンレス（編集部注：箱スカだ））があったので、足となるクルマは、ただ走ればよかった（言い訳させて）。
だから、友人を通して格安物件を乗り継ぎなんとかやってきたのである（編集部注：５０円のミラとか）。
ほとんど使い捨て状態だったので、タイヤ交換をする前には、エンジンブロー（一部にはオイル交換すらしてないという証言もある）などで次のクルマに乗り換えるといった感じで、当然車検も受けた例しがない。
そんな私が、今日のようにビートを大事に乗っているのは、自分でも不思議だ（編集部注：奇跡に近い）。

それは、平成８年の５月頃だった。
この時期になると、気候も温暖となり、日中の晴れた日には、窓を全開にしておかないとつらいと感じる機会が増えてくる。
その当時、ジムニー５５０に乗っていた私は、昨年の猛暑で渋滞にはまり移動サウナ状態になったことや、このクルマの前に乗っていたクルマが、初夏のころ通勤途中に突然エンジンルームから蒸気のノロシをあげて道路上の巨大な発煙筒になったことを思い出していた（実話）。
「そろそろ厳しい季節だな」ふとつぶやき、去年ガソリンスタンドでもらった手動送風機（別名：うちわ）をパタパタとさせながら、ジムニーが売り時であることを感じていた私は、何の気なしに書店へ向かっていた。
はじめに手にしたのは「カーセンサー」であった。
インデックスでなぜかスズキやダイハツを探してしまうのは悲しい性だろうか、いい物件（格安）がないかセッセとページをめくっていたが、ジムニーがことのほか良いクルマだったので、なかなか納得のいく物件がなかった。
エアコンさえついてればなぁなんて考えながら、（ここへきて友人からのおいしい物件の話も尽きてしまっていたので）そんな日が何日か続いていた。

それから何日かしてである。
仕方ないので予算の枠を広げてみるかなと思い腹をくくって物件を探していると、広げた予算の枠よりはまだ遠かったが、程度下のビートが４０万円そこそこで取り引きされている事実を知った。
「オープンカーか」そういえば乗ったことないし、エアコンも標準装備だし、ちょっと贅沢してみるかとさっそくＴＥＬしてみた（贅沢かどうかはわからんが）。
結果は残念だったが、それからどういう訳か、選択肢はビート１本になっていた。
その時点では価格とエアコンとオープンだけが理由だった。
それから数週間後、現在の銀ビーと出会う。
でも買う気はあまりなかった。
バージョンＺであり価格もそこそこしていたからである。
しかし、はじめてエンジンをかけてみて、いさましいエキゾーストノートがリアからすることや、現代車の中にあっても異質の雰囲気があることに負け、これは賭けてみる価値のあるクルマと予感し、次の瞬間には、契約を済ましてしまっていた。
自分でも、この行動には驚いた。
でも本当の良さを知ったのは、納車後だった。

キーを受け取り、初めてのドライブが始まった。
結果的に、エアコン付きで、オープンで、ミッドシップの雰囲気が味わいたいということだけだけで購入した物件だったので、走りの点は、全く期待してなかったのだが、走り出してみていままでにない感覚をいきなり感じ取ってしまった。
ショートストロークでビシッと決まるシフト。
しかもクロスレシオでバイクに近い運転感覚。
そしてなによりも感心したのが超クイックなステアリングフィール。
ちょっと振っただけで過敏なくらいノーズが反応する。
これがミッドシップか！その感動はいまでもおぼえている。
しかも、オープンだからと期待薄にしていた車体剛性が、クローズドボディーをも凌ぐかと思われるほど高い。
で、直進性もいい。
ビートがここまで立派なクルマとは思わなかった（編集部注：失礼な！）。
期待してなかった部分が、思いのほか優れていたので驚きは大きかった。
いい買い物をしたなと思った。
ただのオープンカーだったら、もう飽きてしまっていたかもしれない。
エアコン付きの足グルマを探していたのが、どういう訳かいい意味で、目的を変えられてしまった。
いまではもはやただの足代わりではない、趣味をも兼ね備える立派な財産である。